毎年2月半ばから3月半ばにかけては確定申告の季節です。ただ、会場はどこも混雑していていますので待ち時間が長くなりますし、季節柄インフルエンザなどの感染症や、最近ははしかなども心配ですね。できれば、自宅で簡単に確定申告ができればいいとは誰しもが思うことでしょう。
そこで、2019年1月から新たな確定申告の手法として、スマートフォンやタブレットを利用した「スマート申告」が始まりました。この記事では、その使い勝手や注意点をまとめています。
今年こそは、スマート申告を利用してみようかと考えている方は参考にしてみてください。
スマート申告が使える場合/使えない場合
スマート申告は、スマートフォンやタブレットを利用した申告です。スマートフォン/タブレットは、androidでもiOS端末(iPhone/iPad)でも、どちらでも利用可能です。
スマートフォンなどを使って確定申告をするスマート申告と、パソコンでする従来方式の確定申告とでは、できることが異なります。
まずはスマート申告が利用できるかどうかの確認が必要です。
スマート申告が使えるかどうか確かめよう
Googleなどで「スマート申告」で検索すれば国税庁のホームページを見つけられるはずです。スマート申告の実行は、ここからたどっていくのが一番簡単でしょう。
国税庁のサイトの中に、やや分かりづらいのですが、「所得税(確定申告書等作成コーナー)」というリンクがあるのでそちらから順番にたどっていきます。
ページを開くと、すぐに「確定申告書等作成コーナー」というボタンが見つけられます。
新しく作成する場合は上の「作成開始」を選びます。
平成30年分(2018年1月から2018年12月まで)の確定申告をする場合は「はい」を選択して「次へ」をタップします。
スマート申告は、スタートの2019年の段階ではまだ利用できる条件が限られており、ここから先で条件を満たしているかどうかが判定されます。
まず、「給与以外に申告する収入があるかどうか」を尋ねられます。もし、サラリーマンで、給与以外(副業や投資など)の収入があるなら、「はい」とするしかないのですが、こちらをタップすると、
”「はい」に該当する方は、お手数ですがPC版をご利用ください。”
というメッセージがでてしまい、スマートフォンやタブレットでのスマート申告は利用できなくなってしまいます。
同様に「源泉徴収票は一枚だけですか」と「本業の勤務先で年末調整を済ませていますか」には、それぞれ「はい」と回答しないと、パソコン版の確定申告コーナーに誘導されます。
続いて「医療費控除や寄付金控除を受けますか」には「はい」と、「確定申告で追加する控除や年末調整の内容への変更がありますか」には「いいえ」という回答でなければなりません。
これらの要件を満たしていないとスマート申告は利用できません。フローチャートとしてまとめると、以下のようになります。
スマート申告の対象者とは
要するに、2019年度のスマート申告は以下のような人を対象とした制度です。
・本業以外に、副業収入やダブルワークでの収入、株式の売却益や配当収入などがない
・勤務先で年末調整を済ませている
・医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税など)を受けたい
この条件を満たす時にのみ使える制度と考えると理解が早いかと思います。
ただし、ふるさと納税も、ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告が不要ですので、せっかく鳴り物入りでスタートしたスマート申告ですが、2019年時点では便利に利用できる人はかなり限られてしまうと思われます。
スマート申告の事前準備
申告書の提出方法を「e-Tax」とすると、インターネット上だけで確定申告が完結します。「書面」とした場合には後ほど印刷して郵送する必要がありますので、通常は「e-Tax」を選択することになるでしょう。
ただし、スマート申告を利用するためには、税務署で発行してもらえるIDとパスワードが必要になるため、事前準備が必要です。
IDとパスワードは、税務署で職員と対面の上で本人確認書類を提示しなければ発行してもらえず、インターネット経由で本人確認書類をアップロードして申請などの手続きもできません。
こうした事前準備を整えれば、医療費控除、寄付金控除などの申請に限れば、スマート申告で比較的簡単に確定申告を行えます。
スマート申告を使ってみた感想
スマートフォンだけで確定申告ができるということで、登場した時には話題になったスマート申告ですが、リリース初年度の2019年度での使い勝手は、あまりよいものとはいえません。利用できる人はかなり限られてしまうというのが実情でしょう。
まず、収入源が一箇所でなければならないという時点でかなり利用者が限られてしまいますし、事前に税務署へ行ってIDとパスワードを発行してもらわなければならないという点もやや利便性を損ねています。しかも、現状では、医療費控除を利用する人や、ふるさと納税でワンストップ特例制度をなんらかの理由で利用できない人くらいにしか使い道がない制度といえます。
確定申告会場の混雑を避けられる、パソコン不要で確定申告ができる、というコンセプトは非常に優れたものですので、次年度以降、もっと利便性が高くなってくれることを期待したいと思います。