転職や起業が決まって退職を決断した時、気になるのは使わずに溜まったままの有給がどうなるのかというところ。
有給は全部使ってしまって退職したいところですが、
・辞める人間が有給を使っていいのか?
・有給を使うとしても理由の欄にはどのように書いたらいいのか?
・会社や同僚に嫌な顔をされないだろうか?
など色々な疑問や不安がある人も多いでしょう。
この記事では、そんな退職時の有休消化の様々な疑問に答えていきたいと思います。
そのほかの退職手続きの正しい手順や流れについては、こちらの記事で紹介しています。
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もくじ
退職時の有給消化でよくある3つの疑問にお答えします。
まずは退職時の有給消化についての疑問の中から、とくによくある3つの”疑問”についてお答えしていきます。
【その1】退職時に有給を使ってもいいの?
ただでさえ退職で同僚たちに迷惑をかけるのに、その上有給休暇を使うなんて、と気を使ってしまう方もいれば、上司などから「退職者は有給を使わない慣習だから」などと言われて有給を使えなかったという方もいるようです。
実際、退職時に残っていた有給をすべて消化できた人は半数にも満たないというデータもあります。
マイナビ転職「転職経験者にアンケート! 退職時の有給消化は平均X日」より引用
ただし、結論としては”有給休暇は労働者の正当な権利”ですので、消化して退職してもまったく問題ありません。
有給休暇を活用すれば、最終勤務日から退職日まで、在籍して給料は発生するけれど出社はしないとすることもできるのです。
【その2】有給の理由はどう書けばいいの?
有給休暇の取得に理由は必要ありませんが、記入を求められることもあるでしょう。
一般的には「私用により」や「私事都合により」などと書くことが多いことと思いますが、退職の際には「有給消化のため」などでも問題ありません。
会社によっては有給の理由を詳細に書くように求める会社もあるようですが、原則的には有給の理由は「私事」というだけでいいのですが、穏便に退社をするために、会社が求めるような記述の仕方をして歩み寄りの姿勢を見せてもいいかもしれませんね。
【その3】嫌な顔をされたらどうしたらいいの?
会社は有給消化の申し出を拒否できません。
「退職者は有給消化しない慣習だから」などという会社もあるようですが、これは労働基準法違反です。
円満に退職するために、あまり波風を立てたくないかもしれませんが、法律違反であるという点にやんわりと理解を求めた上で冷静に話し合えば必ず良い結果が得られるはずです。
どうしても有給消化などの退職条件について、会社と折り合いがつかない場合は退職代行サービスを利用する方法もあります。
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有給を使い切るには退職日の設定に注意
有給休暇は労働の義務がある日(=所定労働日)にしかあてられない点に注意が必要です。
そもそも労働の義務がない、会社や部署の公休には有給をあてられませんので、公休の分を考慮して退職日を設定しないと、有給を使い残してしまう可能性があります。
例えば、有給を30日残したまま月末の日を最終勤務日にしたとします。
土日祝日が完全に休みの会社だったとしたら、有給を全部使い切って退職するなら、退職日の設定は下の図のようにしなければなりません。
※会社の公休日を赤色、有給休暇を使用する日を黄色で表しています。
このように、有給30日をすべて使い切って退職するなら、退職日は最終勤務日から45日目です。
有給の残り日数が30日だからといって、最終勤務日から30日後を退職日としてしまうと有給を使い残してしまいます。
公休を加えて有給を消化しきった退職日がいつになるのか、会社の総務部などに問い合わせながら退職日を設定しましょう。
退職時の有休消化に「時季変更権」は行使できない
時季変更権
原則として有給休暇は労働者の権利であって、会社に認めてもらうものではありません。
ただし、繁忙期などで有休を使われると困るという場合に、会社は有給休暇を後日に回してほしいと求めることができ、これを「時季変更権」といいます。
退職日が決定して、それまでは有給を消化することにしたとします。
そこで会社から引き継ぎのために出社してほしいと言われたらどうしたらいいでしょうか?
退職日が決まっているので、有給は後に回すことができません。
この場合、会社は時季変更権を行使できないのです。
「当該労働者の解雇予定日をこえての時季変更は行えないものと解する」(昭和49年1月11日基収第5554号の2)
つまり、会社は退職日までの有給消化中の従業員に、時季変更権を行使して、引継ぎなどのために出社を求めることはできません。退職日がすでに決まっている以上、有給を後回しにできないからです。
もちろん、円満に退社するために会社と話し合って退職日を後ろ倒しにしてもいいですが、その結果、退職日が次の会社の入社日以降になってしまわないようにしましょう。
今の会社と次の会社のどちらかが二重就労(兼業)を禁止していれば、就業規則違反になってしまう恐れがあります。
まとめ
退職時に有給を使った方がいい理由は次のとおりです。
・有給は労働者の正当な権利だから使った方がいい
・最終勤務日から退職日までの有給消化期間は、収入の心配をせずに次の生活の準備に専念できる貴重な時間になる。
会社が有給消化をしぶるようであれば、退職時の有給消化を拒めない法的根拠があることをやんわりと伝えながら冷静に話し合いをしましょう。
また、有給の残日数を考慮して退職日を設定する時のポイントは次のとおりです。
・引き継ぎに必要な日数を考慮する
・会社の公休には有休を消化できない
・退職時には会社側の権利である時季変更権が制限される
・今の会社の退職日が次の会社の入社日以降にならないようにする