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部下が仕事を辞める理由とは?|【動機づけ要因】と【衛生要因】

投稿日:2019年11月9日 更新日:

KUMAJoe
こんにちは KUMAJoe(@KUMAJoe.Blog)です。



みなさんは部下や雇っているアルバイトスタッフから退職したいと相談された経験はありますか?

これは部下を持つ上司や経営者としては結構ショックな瞬間ですよね。

チームの戦力の減少やそれに伴う業績の低迷、部下が辞めてしまうことによる自分の評価への影響などを考えても、できるだけ避けたい場面です。

この記事では、部下の退職を未然に防ぐための環境づくりについて、「動機づけ要因」と「衛生要因」の考え方をもとにご紹介していきます。

 統計から見る仕事を辞めるきっかけ

次に示す表は、転職した人が前職を辞めた理由を調査したものです。

厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果の概況」 表5より一部抜粋

男女や年代によって多少の差が見られますが、「給料」と「労働条件」が離職の大きな要因になっていることが見て取れます。女性の場合は「人間関係」も一貫して10%以上を占めています。

「仕事がおもしろくなかった」あるいは「自分の能力を発揮できなかった」という理由での離職はあまり多くありません。このデータからは、部下やアルバイトスタッフの離職を防止するためには、給料や待遇面の改善が有効であると読み取れるでしょう。

 

 仕事に満足できないことは辞めるきっかけにならない

アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグは、仕事に関するさまざまな事柄を「動機づけ要因(満足要因)」と「衛生要因(不満要因)」に分類しました。

 

【動機づけ要因】と【衛生要因】とは?

動機づけ要因とは、それが満たされることによって仕事への満足度が高まるものであり、衛星要因とはそれが満たされていないと仕事に不満を抱くものです。

動機づけ要因の中には、たとえば「仕事そのもののおもしろさ」や「達成感」、「他者の承認」、「自分自身の成長」などが含まれ、衛星要因には「労働条件」や「人間関係」、「他者の監督」などが含まれます。

なお、動機づけ要因のひとつである「会社の方針」には、適切な情報開示がされないために、納得感をもって仕事をできないということが含まれます。

上司と部下の間で、あるいは会社と社員の間で信頼関係を構築するためには適切な情報開示が必要であることは、「部下のモチベーションを下げない上司は「フェア・プロセス」を心がける」で詳しく解説しています。

 

部下のモチベーションを下げない上司は「フェア・プロセス」を心がける

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【動機づけ要因】と【衛生要因】がもたらす影響

ハーズバーグは著書の中で、職務満足が満たされないことは職務への不満にはつながらず、不満足要因が取り除かれることは職務満足に直結するわけではないと述べています。

少し分かりにくい話ですが、動機づけ要因が足りなくても仕事への不満を抱くわけではなく、単に「満足ではない」状態になるということです。

衛生要因が満たされた場合は、仕事に満足するわけではなく、単に「不満ではない」状態になるとしています。

要するに、満足できない状態が不満であるわけではなく、不満ではない状態が満足であるわけではないのです。満足であることと不満であることは平行線の関係にあり、決して交差することがありません。

衛生要因の充足は満足にはつながりません。衛生要因が不満要因がとも呼ばれる理由がここにあります。

例1(飲食店)

たとえば、飲食店に入ったとして、床やテーブルが不衛生であれば人は不満を持ちます。しかし、床やテーブルが衛生的だったとしてもそれは当然のことと感じられるだけで、その店に対する満足度につながることはあまりありません。

例2(事務用PCの交換)

仕事に使うパソコンの調子が悪ければ誰しも不満に思いますが、それを普通に動くパソコンと取り換えてもらえたところで「普通に使えるパソコンで仕事をさせてもらえるなんて、幸せだ」と思う人はいないでしょう。

ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」を前提におくと、厚生労働省の示したデータを理解しやすくなります。

すなわち、「仕事のおもしろさ」や「自分の能力を活かして課題を達成すること」といった動機づけ要因の不足は離職の直接原因にはなりにくく、「給与」や「労働条件」、「人間関係」といった衛生要因の欠乏は離職の直接原因になりやすいのです。

 

 部下が仕事を辞めるきっかけをなくすためには?

では、「仕事のやりがい」や「達成感」、「他者の承認」はあってもなくても仕事を辞めるきっかけにはならないのでしょうか?

そうではありません。動機づけ要因が不足していると、環境への不満を感じやすくなってしまいます。ハーズバーグは著書の中で次のように述べています。

職務に「動機づけ要因」が欠けているときには、現実的・想像的不良職務衛生にたいする従業員の易感性が増大し、その結果として、従業員に与える衛生の量と質をたえず改善しなければならなくなる

フレデリック・ハーズバーグ, 『仕事と人間性―動機づけー衛生理論の新展開』, 東洋経済新報社, p.94

 

【動機づけ要因】と【衛生要因】の相互作用

図の赤く塗られた範囲を「離職に至る」ゾーンとします。青い点が打たれた地点よりも黄色の点が打たれた地点の方が「環境は衛生的」ですが、「動機づけ要因が少ない」ため、環境への不満点が目についてしまうため離職に至りやすくなります。

つまり「給料はそこそこだけれど、こんなくだらない仕事はもうやっていられない」という状況が黄色の点です。

例1(小学校の先生)

青色の点の例としては、小学校の先生などが挙げられるでしょう。受け持った子どもたちが成長していく姿を目の当たりにして、「苦労が報われた」という思いをもつ熱血な先生であれば、それは強い動機づけ要因になるはずです。給料が高いわけではなく、しかも激務であるにも関わらず「辞めようと思わない」という心理になるのです。

例2(国境なき医師団)

あるいは、国内に留まっていれば好待遇が得られる経験豊かな医師が、給与が低いだけではなく、身の安全さえ保証されない「国境なき医師団」での活動に身を投じる場合があります。このような例は、動機づけ要因が多いか少ないかによって、耐えられる不良衛生の水準が変動することを示しています。

このように、「仕事のやりがい」や「成長」などの不足は仕事を辞める直接の原因にはなりにくいものの、間接的に人を離職に影響を及ぼす要因になるといえます。

 

 部下が仕事を辞めるきっかけを作らないためには?

ハーズバーグは次のように主張します。

職務の衛生要因は、無意味な仕事に短期間作用する麻薬的性質を帯びている。すなわち、それを欠いた個人はふしあわせになるが、それを入手しても一時的にしか気が晴れない。なぜなら、効果がすぐに薄らぐために、衛生追求者は慢性的に不満を抱くことになるからである

フレデリック・ハーズバーグ, 『仕事と人間性―動機づけー衛生理論の新展開』, 東洋経済新報社, p.93

 まとめ

冒頭で紹介した厚生労働省の発表によるデータは、部下の離職を防止するためには給与や労働条件の改善が必要であると示しているように見えます。しかし、その分析はあまりに表面的であると言わざるをえません。

「仕事がおもしろくない」ことは、確かに離職の直接の原因にはなりません。しかし、仕事にやりがいを感じられないことによって、給与や待遇、人間関係への不満を感じやすくなってしまうのです。

もちろん、労働環境を良くしておく努力は重要です。しかし、それだけでは充分ではありません。部下の退職を未然に防ぐためには、部下が仕事そのものに前向きになれるようにフォローし、その成功や成長をバックアップしていくことが重要です。

 

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